15歳で自殺する子供の育て方

私の育った家庭を反面教師にしてほしい。

金が無いのは子供の自殺の間接要因:子供の自殺を止めるには(8)

 父と母の喧嘩の原因は、多くの場合「金が無い」ことに起因するものだった。

 父は人付き合いに多くの金を使った。1か月で10万円くらい使っていたらしい。仕事上の部下である人達を「若い衆」と呼んで、食事やらボーリングやらに連れまわしていたようだが、そのお金を全て支払っていたのだろう。

 父はその事について反省するどころか、誇りに思っているからタチが悪い。「若い衆が俺を慕ってくるのは、俺について来たら良い事があると思っているからだ」と恥ずかしげもなく言う。

 「おごってやる」「ついてこさせる」というのが、父の自尊心を堪らなく刺激するのであろう。家族からすれば迷惑千万である。

 おかげさまで、家賃などの支払いを滞納していたし、新聞屋が集金に来ても数千円というお金が払えなかった。

 だから小学生の私は、新聞の集金の人が来たら、「お父さんとお母さんは今いません」と嘘を言わされていた。それは親の命令により私が遂行する嫌な仕事であった。

 金をふんだんに使っていたのは父だけではない。母も大いに金を使った。パチンコ屋に落としてくるのだ。

 ギャンブルというのは、途方もなく金のかかる遊びだ。まだギャンブルに染まっていない人には、そもそも手を出さないことを強く勧めたい。

 自分の小遣いの範囲で遊ぶのなら良いのかもしれないが、私の母は生活費にまで手を出していた。生活費にまで手を出すとどうなるか。言わずもがな、借金をすることになるのである。

 借金をしてもすぐに全額返せるなら、まだいいのだろう。

 だが、母は稼いだお金で、借金を少し返して、また借りるのだ。あるいは、あっちで借りたお金で、こっちを返すのだ。

 母は多重債務者に転落していた。

 借金の利息だけ払っていても、借金は減らないし、パチンコもやめないから生活も苦しい。

 だから、私の家庭はいつもお金に困っていた。
 父と母の馬鹿げた金遣いのせいで、いつも困っていた。

 だが、いくら金が無いとは言っても、金が必要な時があるのだ。

 その時に母が〇〇円が必要だと父に話すのだが、そこで父が激しく怒りだす。無いものを出せと言われているわけで、父は怒るしか方法がなかったのだろう。

 そういえば、こんな風に父が怒っていたことがあった。母に対して、「どうせ、男に金を貢いでいるんだろう」と。

 母の金遣いが荒いのは、8割がパチンコである。残り2割は家計管理をしないための無駄遣いだ。

 そもそも浮気をしているなら、もうちょっと綺麗な恰好をするはずだ。ボサボサの髪を美容院で整えて、薄汚いバッグだって買い替えて、時代錯誤のお召し物も何とかするだろう。だが実際にはそんなことは無かったのだ。誰かの葬式でも無い限り、化粧もしない母が浮気をしているはずがない。

 父の予想は全くの的外れで、ありもしない嫌疑を母はかけられていた。母は「バカじゃないの?」と一言だけ言っていた。

 父は冷静な判断が出来ないほど、心の余裕を失っていたのだろう。「自分の家庭がこんなに金に困っているのは、妻が男に金を貢いでいるからだ」と思い込んでいたのだ。母は、男に貢いでいたのではない。パチンコに貢いでいたのだ。

 それにしたって、母が男に貢いでいようが、パチンコに貢いでいようが、父にそれを責める資格があったのだろうか。父は「若い衆」とやらに貢いでいたではないか。公営住宅に住んでいる低収入世帯でありながら、毎月10万円の交際費は常軌を逸している。

 金が無いせいで夫婦が仲違いし、家庭内暴力に巻き込まれた子供が自殺を図るという、私が歩んだストーリーを再現したくないのなら、金に困る生活だけは避けるべきだ。

 これから先、この世に生まれてくる子供たちに代わって私が言おう。夫婦が揃って、手前勝手に散財するのなら、是非とも親になることを諦めてほしい。